アナログレコード復活

当時はアンプのデザインに惚れ、電源を入れて機材を充分温めスタンバイになるまでの数十分間を至福な時間として楽しみ、その間にサイフォンでコーヒーを沸かし、レコードジャケットからレコードを取り出し、スプレーをかけ、ターンテーブルに乗せ、針を置いて音が鳴るまでの数秒にワクワクしてました。アンプの重厚感、巨大スピーカの迫力、等々音楽以外にも色々とワクワク出来ました。懐かしい時代。

昨日(6月29日)のテレビニュースでSONYが30年ぶりにアナログレコードの生産を再開するとの報道があった。オーディオファンの自分にとって、とても嬉しいニュースで翌朝の新聞でも写真入りで記事が掲載された。SONYの発表では自社は勿論他社からの発注も受けアナログレコードを量産する予定だとしている。
 ただ、再開に至ったコメントがいささか「カチン!」と来た。
SONY曰く、レコードを聴いて育った世代(ファン)だけでなく最近、若い人もアナログレコードや再生オーディオ装置にも人気が広がり需要が増えたためとしている。ライバルであるPanasonicの音響機器ブランドであるTechnics(テクニクス)も昨年突然目覚めたように往年のアナログレコードプレーヤーの名器SL−1200を復活生産販売を始めた。理由はSONYと同じように若者世代がアナログ音響を見直し人気が出て購買層が広がってきたためと説明した。
 世界をリードし日本を代表する2社のコメントを聞きアナログオーディオ世代には嬉しさと腹立たしさがある。(この世代はほぼ団塊世代を中心に前後だろう。だから年齢的には60代後半から70代、更に先駆者や大人になってから機器をそろえた人は80代かな)
当時は音響3大メーカーとしてパイオニア、トリオ(後のKENWOOD)、山水と言われ、ここにYAMAHAONKYODENON、に加えLAX、AKAITEACナカミチ、MICRO、オーディオテクニカなど専門メーカーが加わり更にビクター、東芝、三菱、日立、松下など大手家電メーカーまでも参入して昭和40年代の半ば位から50年代後半までコンポと言われる様々なメーカーの機種を自分の好みとお小遣いに合せ、取りそろえ聴きこんだ凄いオーディオブームがあった。そして更に海外ブランドもマランツ、タンノイ、アルテックマッキントッシュJBLBOSE、オルトフォンなども参入して大変なブームと共に大きな経済効果もあって各社が技術のしのぎを削り「原音忠実」「究極のサウンド」を目指した。  
当時ラーメンは50〜80円くらい、しかしレコードはドーナツ盤が200円、LP1500〜1800円だった(数年後にはドーナツ盤は300〜330円にLPは2000〜2500円になった)中々レコードが買えず、FMの音楽番組をオープンリールやカセットデッキで録音(これをエアチェックと言った)して膝小僧を抱え、たまに彼女を「いい音楽聴かせるから」と誘い部屋で聴いていたものだ。
がしかし、ブームが去ったあと、無用の長物としてホコリをかぶり隅に追いやられ、リサイクルショップやハードオフに山積みされレコードは捨てられ、そしてCDに代わり、再生装置も超小型化していった。
 その時代を含めミニコンポ、そしてウォークマン、そしてiPad更にハイレゾと進化した時代を頑なにアナログ音響を愛し、貴重なアナログレコードを大切に保存し、レコード針を探し求め、数少ない修理屋に頼り、全盛期の遺物とまで揶揄された総重量○○百キログラムの図体を大事に手入れし聴きこみ、部屋中を音響機器に囲まれて生活しこのオーディオ機器を愛着をもっている我々世代。
 一体、誰のお蔭でこの文化と技術が支えられて来たのだと私は言いたい。若者がちょっと古いアナログレコードを聴き、「意外といい音してるじゃん!」「このアンプ、スピーカー、レコードプレーヤー図体はデカいし重いけど操作も面白いしメチャカッコいい!」などと今まで見たことないモノの反応にメーカーが敏感にこれは商売になると目論んだ2社の軽薄な企業姿勢に何となく嫌悪感をもってしまったのは団塊世代のひがみだろうか?
この間に音響メーカーのトップを走った老舗のPIONEERは赤字に転落しそれでも採算を度外視し、頑なにいいものを創りつづけてきたがついに、部門ごとの切り売りし、本社ビルをも売りに出す悲劇に見舞われていった。残念!!!。
大手のメーカーはあのブームのお蔭で売り上げを伸ばし更に飛躍的な技術の進歩があったはず、それなのに今まで 「我々の要求には誰も耳を貸さず、新製品や再開はおろかパーツさえもなくなり、修理不能と送り返されたり、あるときは買った金額より修理金額が高くなりメーカー技術部から「どうされますか?保証期間なのでどうしてもだったら差額をご負担されるか購入品と同額の製品と入れ替えるか、どちらでも」と言われたこともある。
 果たしてこの現象はまたブームで終わるのかとつい、思ってしまいます。若者が飽きたらそれで終わりですかね。
携帯で音楽を聴くこともオーディオというのなら、今まさにオーディオブームでしょうね。
今、少し復活しているといわれているのは60代半ばから後半のいわゆる団塊の世代が引退して昔の夢を求め、購入されているためが大きいと思います。実際若い世代はそれほどではないでしょう。
「今のオーディオ売り場や雑誌を見ても何も感動しないし、買おうとする気がないそのかわり、粗大ゴミ集積場やリサイクルショップ、ネットオークションをふと見るとドキッとすることがある」
これが本音ではないでしょうか? 聴く人間も古く、そのうち捨てられるのかな。