V-storm50の時々日記 PSYCHO サイコ!


飛び石のゴールデンウィークをいかがお過ごしでしょうか?連休直前のマイクロソフト社のインターネットエクスプローラーの不具合のニュースにはビックリでしたね!何か嫌な世の中になってしまいました。高度なIT社会の中に潜む悪意ある人が、あるソフトに対し、何か仕掛けようと思えば何でも出来る怖さは正体が見えないだけに不快感と嫌悪感を感じてしまいますね。

ところで久しぶりに映画を観ました。最近は洋画、邦画とも残念ながら観る意欲がかき立てられるような作品がなく、やたらCGを駆使したり、破壊しつくしたり、リメイクだったり、監督の力量不足、脚本の練り方不足、やたら分かりにくいストーリーの複雑さ、出てきただけで分かるキャラクター、泣けてくる(笑ってしまう)演技力の稚拙さ、全員がワルでまともな登場人物は一人もいなかったなどなど…。数え上げればキリのないほど観たくない作品の行進が続いています。

観終ったあと何を言いたかったのか分からなかったり、無駄な時間とお金を使ったと思うほど、残念で惨めなことってないですよね!それでもそれを認めたくないから何か一か所でもいい所を考えている自分にふと気づきなお嫌になってしまうことがあります。
自論ですが所詮、映画(だけではありませんが)は観客のレベルを超えられない…。つまり観客のレベルに合わせた作品しか生まれないように思います。

DVDでの鑑賞ですが作品は2013年に公開された「ヒッチコック」です。この作品は地元長岡、三条などの映画館では残念ながら公開されませんでした。私の敬愛する英国のアルフレッド・ヒッチコック監督の逸話を散りばめながらヒッチコックの最も脂が乗りきっていたころの作品「サイコ」の制作秘話と妻であり映画作りのパートナーでもあるアルマとの確執を描いたこの映画で主人公のヒッチコックを見事に演じたのは英国を代表する名優サーの称号をもつアンソニー・ホプキンスです。外見は勿論、喋り方、間のとり方、歩き方、仕草まで見事に演じています。掲載した比較写真をご覧ください。サイコとは精神病、精神異常、多重人格など広範囲の意味を持つと言われ実はこの映画の公開後に注目された言葉だそうです。

ヒッチコックは皆様方お馴染みの様にサスペンスの神様と呼ばれ英国で数々の作品を大ヒットさせハリウッドに招かれてアメリカでも数々の大ヒット作を誕生させ世界中の映画ファンを魅了し、怖がらせ、次回作をこれほど待ち望まれた監督はいませんでした。原作や、主演俳優、ストーリーなどで観客に訴えず、監督の力量で映画館に観客の足を運ばせることが出来た唯一の監督でしょう。

1960年に公開された実話を基にしたこの作品「サイコ」は全米で公開されるやその爆発的なヒットで全米はおろか、世界中に「サイコ」を観たか?と会話され、映画館で悲鳴が起こり、それをニンマリと笑みを浮かべたヒッチコックはしてやったりと次回作は観客をもっと怖がらせてみせると豪語したと言われます。

作品)アメリカ映画1960年(昭和35年アルフレッド・ヒッチコック監督作品 109分
出演)アンソニー・パーキンスジャネット・リーヴェラ・マイルズジョン・ギャヴィン

【あらすじ】
もし、この映画を万が一、未見の人がいるなら兎に角まず観ること!映画を好きな人、語りたい人、必見の伝説的作品です。会社の金を横領した女が逃走の途中立ち寄ったベイツ・モーテル。そこは管理人の寡黙な青年ノーマンと離れの母屋に住む老母がいた・・・。映画作りの神様ヒッチコックが作った世界の映画人とファンをうならせ全てのサイコ・サスペンスのルーツとなった最高傑作です。

【見どころ】
この映画はその後のサイコ・サスペンス映画のバイブル的な作品となった。天才ヒッチコック監督の巧妙な仕掛けに堪能し酔いしれて下さい。巧妙なストーリー並びに主人公のすり替えの見事さ。
ジャネット・リーのブラジャーと色気の不道徳感(当時として)その後、パロディ化さえしたシャワー殺人のショックとカット割りの見事さ。覗き見、ベイツ・モーテルの壁に陳列された鳥の剥製、サングラスの警官、逆光に光る包丁、沼に沈まぬ車、新聞紙に包まれた札束の行方、襲われた探偵が階段から落ちるショット、そしてマザコン青年と老母の存在の怖さ!怖さ!怖さ!
アメリカで実際にあった事件をヒントに、この作品でヒッチコックは思うざまに撮影し、カット割りや編集の魔術師的なテクニックを駆使し、世界中の観客に怖さを体験させ、ラストに度肝を抜く落ちを用意して観る者全てを翻弄した。

この作品に多大な影響を受けたヒッチコックの信奉者ブライアン・デ・パルマ監督はヒット作となった「殺しのドレス」や「ファムファタール」でこのサイコのシャワー殺人を見事に現代に再現させ世界中の映画ファンをニンマリさせた。

見どころで書き込んだ以外のこの作品の象徴的なシーンを拾って見たい。
①オープニング、町全体のショットから一つのビルにぐんぐん近づくカメラがビルの窓から部屋に入って行きそこで情事が行われたことを表現する見事なオープンング
②恐怖感を煽る音楽を担当したバーナード・ハーマンの不協和音の効果的な使い方、ソウル・バスのタイトルデザインの斬新さ。
③ラストにベイツの歪んだ微笑に老婆のミイラ顔が瞬間浮かぶ見事なサブリミナル効果がとどめのショックを与える。

これほど観客の目をくぎづけにしながらこの緊張感を持続できた作品は類を見ない、観る者すべてがヒッチコックマジックの虜になってしまうこと請け合いのこの作品の結末は絶対内緒にお願いします。

映画「ヒッチコック」で「北北西へ針路を取れ!」を大ヒットさせた次回作を悩みぬいたヒッチコックアメリカで実際に起きた猟奇事件をヒントに当時としては禁断モノに挑もうとしたため映画会社から反対されたため資金調達出来ず、自分の家屋敷まで抵当に入れ自費で制作に挑む過程や妻のアルマとの確執、そして「サイコ」の制作秘話主演俳優を決める経緯、撮影風景など「サイコ」を観たことのある映画ファンが頷くシーンや逸話が満載の作品です。またこの映画「サイコ」で主演したジャネット・リーそっくりにメイクして演じた金髪美女のスカレット・ヨハンソンやアンソニー・パーキンスヴェラ・マイルズを演じた役者達も大変よく似ていて観ていて楽しくなりました。

実際ヒッチコック回顧録で語っていたように出演俳優の大根ぶりや撮影テクニックの裏話や撮影アイディアなども映画を通じて回想することが出来たり、当時(1960年)のアメリカの倫理観なども描かれていて興味をそそられます。ヒッチコックファンには堪らない作品でしょう。
最後にこの映画の結末は決して喋らないように…。まだ観ていない人たちのために…。