V-storm50の時々日記 スクリーンガイド2



最近気が付いたのですがロンドン五輪女子柔道57キロ級で金メダルを獲った松本 薫の雰囲気に酷似した
マギー(ヒラリー・スワンク)だと思いませんか?ホントよく似ていますよね!

週末です。寒いです。こんな日は温かい部屋で感動の映画を楽しむのも良い過ごし方と思いませんか?
紹介したい映画の2作目は次の作品です。

「ミリオンダラーベイビー」アカデミー賞 主演女優賞、助演男優賞、監督賞、作品賞受賞(主要4部門独占)
2005年(平成17年)公開 133分
監督 クリント・イーストウッド
出演 クリント・イーストウッドヒラリー・スワンクモーガン・フリーマン
許されざる者」「ミスティック・リバー」のクリント・イーストウッドが監督・主演を務めた衝撃のヒューマン・ドラマ。
厳しいボクシングの世界を題材に、そこに生きる名もなき男女の悲愴な人生模様を綴る。「実の娘に縁を絶たれた初老のトレーナーと
家族の愛に恵まれない女性ボクサーの間に生まれる崇高な絆の物語」


【あらすじ】 
ロサンジェルスダウンタウンにある小さなボクシング・ジムを営む老トレーナー、フランキー。その指導力に疑いのない彼だったが、
選手を大切に育てるあまり、成功を急ぐ優秀なボクサーは彼のもとを去ってしまう。そんなある日、31歳になる女性マギーがジムの門を叩き、
フランキーに弟子入りを志願する。13歳の時からウェイトレスで生計を立てるなど不遇の人生を送ってきた彼女は、唯一誇れるボクシングの
才能に最後の望みを託したのだった。ところが、そんなマギーの必死な思いにも、頑固なフランキーは、“女性ボクサーは取らない”のひと言で
すげなく追い返してしまう。それでも諦めずジムに通い、ひとり黙々と練習を続けるマギー。フランキーの唯一の親友スクラップはそんな
マギーの素質と根性を見抜き、目をかける。やがてマギーの執念が勝ち、フランキーはついにトレーナーを引き受けるのだが…。

【見どころ】
老トレーナーと女版ロッキーを想像し中身をなにも知らずに映画を観たら度肝抜かれました。
観たい(期待・想像できる)スポーツ根性ドラマ的サクセスエピソードは前半までで、そこから先はむしろ直視したくないものだけを描いて
いくような構成。どん底の人間が成功する前半があるからこそ、後半徹底して描かれる正義と悪、そして尊厳死に向き合う解決することのない
ふたりが置かれた現実の残酷さだけが際立つという、とてもシンプルで大胆な物語進行。さらにこの現実にコントラストをより鮮明に与える
最後に訪れるものによって腹の底を抉(えぐ)られるほど重たく突きつけられます。
『自分を守れ』『ボクシングは相手の尊厳を奪う競技だ』
『ファイトだけでは勝てない』『ルールは常に選手を守る』そして試合前にフランキーがマギーに贈ったリングパーカーの背中に書かれた
ゲール語『モ・クシュラ』の意味。この映画はサクセスストーリーから転じて尊厳死
そして父娘の愛とはの意味を考えさせられる。ストイックな演出なのに、この映画的な“問い”を成り立たせてしまうイーストウッドの手腕に
脱帽しました。
 
フランキーはマギーに娘の代替を、マギーはフランキーに父の代替を求めるそしてマギーは師弟として親子として尊厳の意味をフランキーと
共に深く観客に問いかける。「本物以上の親子」へと両者の関係を昇華させるには、あの結末しかなかった。それこそが本作の真の悲劇かも
知れない。この映画のテーマは父娘の愛(モクシュラ=お前は私の「血」)であり、ボクシングの成功物語はそのテーマを描く手段にすぎない
のだろう。

フランキーの自殺が暗示されるラストシーン。2本の注射の1本はマギーの好きだったレモンパイを食べた後、自分に使ったのだろう。
マギーをあの世に送った以上、当然の帰結だろうと思った。なぜなら、彼はあの世でもマギーを見捨てないと約束したのだから…。
この映画のナレーションはスクラップ(モーガン・フリーマン)だが、結末で誰に語っていたかが明かされる…。そこに深い意味がある。
前半の言葉が、後半に浮かんでくる。老境に達しクリント・イーストウッドは名匠と呼ばれるにふさわしい作品を我々にプレゼントしてくれる。
人間とは、人生とは、愛とは、老いとは、そして尊厳死とは、を深く考えさせてくれる。