市民シアター 終戦記念映画上映会


今年は太平洋戦争開戦70年で終戦66年になります。兵士として戦場で戦った人たちは80代の半ばから90代となり
貴重な体験や戦争の残酷さと悲惨さを語り継ぐ人々も少なくなりました。日本人として忘れてはならないこの
戦争をせめて映像で語り継ぎたいと思います。毎年8月に企画する終戦記念企画の市民シアターは小林正樹監督の
東京裁判岡本喜八監督「日本のいちばん長い日」佐藤純弥監督の「男たちの大和」に続く今年は
名匠木下恵介監督「二十四の瞳」をご覧戴きます。これは日本映画の良心です。
日時)平成23年8月26日(日)午後1:30〜4:10
場所)見附市立図書館(2F視聴覚室)
作品)松竹映画1954年(昭和29年)木下恵介監督156分 原作 壺井 栄
出演)高峰秀子、夏川静江、天本英世月丘夢路田村高廣浪花千栄子笠智衆浦辺粂子
清川虹子高原駿雄 他

申込)不要、無料です直接会場にお越しください(先着順です席に限りがありますお早めにご来場ください)

【あらすじ】
大石久子(高峰秀子)は昭和3年、新任教師として瀬戸内海にある小豆島の分校に赴任した。久子が受け持つ
ことになった一年生は十二人で、みな澄んだ瞳をしていた。やがて久子は本校へ転任することになった。しかし
貧しい村の教え子たちは、一人として望み通り進学することができなかった。戦争をはさんで島の分校に戻った
久子は、そこでかつての教え子たちと涙の再会をする。子供たちと女先生の目で見た反戦映画の傑作!

【見どころ】
名作です。数々の唱歌が全篇に流れます。何より無伴奏であるのが心に滲みわたります。「アニー・ローリー」
「村の鍛冶屋」から始まる数々の唱歌と共に物語が始まります。映画の中で「かわいい かわいいと カラスが
泣くよ」と『七つの子』がよく歌われる。教師として子供たちが成長して幸せになってほしいと願うのは当たり
前で、戦争に送って死なせるために教え育てたのではない。大石先生は、教え子や自分の家族に戦争はいやだ、
きらいだと自分の気持ちを語っているだけなのだが 映画の中で、大石先生がかつての教え子、家が貧乏で病に
倒れて臥せているコトエを見舞う場面がある。少女が弱い声で「先生、わたし、もう長くはないんです」と言うと、
先生が「なに言うの、そんなこと言ったらだめじゃないの」と返す。少女が弱気だけで言っているのではないことを
よく知っているから、先生の言葉は口先だけのものではない。続いて少女が「先生、わたし、苦労してきました」と
言って泣きだすと、先生も「そうね、苦労してきたでしょうねぇ」と少女と共に泣いている。大石先生が初めて受け
持った十二人の子どものうち、映画のラストの歓迎会で、男子は五人中三人が戦争に出征して死んでおり、女子も
七人中三人が不幸のために死んだり出席出来ない、大石先生は、そんな子どもたちのために泣くのである。
 たしかにこの映画には反戦のための戦いはないし、空襲の場面、銃剣の一つ、硝煙の一つも描かれないが、これは
壺井栄という人による、言葉と感情という女性の武器を駆使した、れっきとした反戦の物語なのだと思う。昭和29
年度のキネ旬ベストテンは1位が本作品であり、3位が「七人の侍」である。今や知名度は後者の方が遥かに高い。
が、私は当時のランキングの理由がわかった。この作品はとりわけ終盤において、敗戦前後の日本人のみじめさ、
悔しさ、やるせなさをよく表現していて、初公開のころは、誰もがそのことに素直に感情移入出来たと思う。やがて、
七人の侍」の後塵を拝するようになったのは、世の中が悲しみを忘れ去っていったためなのか。若い人も見てみると
いい。日本の風景が風俗が文化が教育が人間関係が、この六十数年でどれだけ変ったか、如実に知らしめる作品であろう。
べたべたに生徒に愛情を注ぐのではなく、等身大のやさしさで見守る姿に感動。家庭や貧困、戦争など一人ではどうする
こともできない問題に対して、葛藤の中に見える根源的なヒューマニズムが気持ち良いです。修学旅行の帰り、小さな
飯屋で大石先生が教え子の松江に再会するところがこの映画のベストシーン。飯屋のあるじ浪花千栄子のうまさとデコ
ちゃんの抑えた演技が絶品。船で帰る先生と同級生を松江が隠れて見送るシーンは移動撮影のお手本。もう思い出すだけ
で泣けます。この作品を感傷的とか叙情的過ぎると言う方もいますが、そこのどこがいけないのか? 感傷的、叙情的
大いに結構、名匠 木下恵介監督の感動作をじっくりご覧戴き映画を通して過ぎ去った昭和をそして戦争を振り返って
考えて見るのも意義あることではないでしょうか。

この上映会は市立図書館と見附シネマ倶楽部のコラボで企画しています。