其の一日

諸田玲子と言う作家をご存じでしょうか?
女流作家で静岡生まれ。一説によるとあの幕末の侠客「清水の次郎長」の親戚とかの説もある人。
女性では珍しく時代小説、歴史小説を数多く発表しています。幕末動乱の中で大老井伊直弼
恋人であり、直弼の間者として生き抜く「村山たか」の視点で描いた「姦婦にあらず」を読みました。
この小説で第26回新田次郎賞を受賞しています。
読み終わり、女って凄い!のひとことに尽きます。愛する男のため、なんでも出来る女の強さと
一途でひたむきな情念に圧倒されました。この「姦婦にあらず」に触発され彼女の短編「其の一日」
も読んでみて二度びっくり!「玲子なかなかやるな!」でした。歴史上の実話や人物を掘り下げ鋭い
洞察力と想像力で緊迫感に溢れ濃密なそれぞれの運命の一日を描いた短編集。武家社会、侍とは、武家
の女たちが生き生きと活写されています。

「其の一日」時代小説短編全四編を収録。第二十四回吉川英治文学新人賞受賞作

【立つ鳥】 
 元禄時代 側用人柳沢(やなぎさわ)保(やす)明(あきら)の下で貨幣改鋳を行った勘定奉行荻原彦
 (おぎわらひこ)次郎(じろう)重秀(しげひで)の失脚の一日


【蛙(かわず)】 
 夫の突然の自害に疑念を抱く妻「弥津」が辿り着く秘密(夫の藤枝外記(げき)教(のり)行(ゆき)は
 遊女を殺害して自らも切腹する) 


【小(しょう)の虫】
ふとした偶然から父と祖父の非業の死と小藩の悲哀を知る十五歳の倉橋(くらはし)寿(じゅ)一郎
(いちろう)(父=恋川春(こいかわはる)町(まち)=倉橋(くらはし)寿(じゅ)平(へい))戯作者で浮世絵師 
黄表紙という絵入り小説のジャンルの開拓者(当時の売れっ子作家)


【釜中(ふちゅう)の魚(うお)】
その日は三月にはめずらしい雪の朝だった。動乱の幕末、井伊家の当主直弼と恋人村山加(か)寿(ず)江(え)
(たか)の運命の一日(長編「奸婦にあらず」の元になった短編)


・女性ならではの女性の凛とした生き方、心理描写などが素晴らしい(蛙・釜中の魚)
・短編だからこその無駄を排した展開と研ぎ澄まされた緊迫感に迫力を感じる
・歴史中に埋もれた人物や事件を妻や恋人、息子の視点でスポットライトをあて凝縮された特別の運命の
一日を描く手腕に敬服しました。

ところでこの諸田玲子が10月8日(土)午後1:30からアルカディアにて講演会が行われます。入場整理券
が市立図書館でもらえます。是非、ご参加下さい。
私のリクエスト(秘かな願い)女流作家がいよいよ登場致します。

美人です!!